バスボムに、愛を込めて


「あ……本郷さん、寧々さん……」


ハンカチを片手に持つ小森は、何故か泣き顔。


「どうしたのよ飛鳥ちゃん、美萌ちゃんと何かあった……?」

「私……どうしたらいいか……美萌さんには“誰にも言うな”って言われましたけど、本当にそれでいいのかわからなくて……」

「ねえ、そんな言い方じゃわからないわ。とにかく私たちが来る前に、何かあったのね?」


葛西の問いかけにコクリと頷き、小森は順を追って話し始めた。

大事なUSBを失くしたこと。
それをある男が拾ったかもしれないこと。

そして羽石が関係者らしい“孝二”という男に電話をかけ、怯えた様子で一人それを取り返しに出て行ったこと。

あの、馬鹿――……

考えるより先に身体の動いた俺は、気が付けば実験室を飛び出していた。


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