バスボムに、愛を込めて
18.…ごめんね。
孝二の会社に着くと、あたしが来ることはすでに受付に知られていて、内線で呼ばれたらしい本人が受付まで迎えに来た。
その顔は悪巧みをしているようには見えなくて、“何かされる”というのは自分の思い込みだったかも、と少し安堵したあたし。
「上にカフェテリアがあるから、そこで話すか」
「う、ん……」
カフェテリア……ってことは、周りに他の人もいるだろうし、やっぱりさっきの電話は孝二の悪ふざけ?
この調子なら、意外とあっさりUSBを返してもらえる?
あたしは孝二の大きな背中に続いて、社内奥のエレベーターに乗り込んだ。
そして孝二が“9”のボタンを押すのを見て、カフェテリアは九階にあるんだなぁと思っていたあたしは、馬鹿だったらしい。
両側からゆっくりと閉まる扉が二人だけの空間を作り出した瞬間、孝二がこちらを振り向きあたしを背後の壁まで追い詰めた。