バスボムに、愛を込めて
「あれは……お前の中での俺の株を上げたいがためにしただけのことだ。美萌の涙すら、自分の都合のいいように利用しようとしたんだよ。だいたい泣かせたのだって俺のせいだろ。俺はそういう卑怯な奴――」
「そんなの嘘……!」
首を横に振りながら大声を上げると、孝二が目を見開く。
「馬鹿もでいい。誰がなんと言おうと、あたしの知ってる孝二は優しい。あたしの中の真実はそれだけだよ……」
我慢できずにこぼれた涙を拭うと、潤んだ瞳に映る孝二は眉尻を下げ困ったような顔をしていた。
「美萌……」
お願いだから、もうこんなことはやめて。本当の孝二を取り戻して。
そう語りかけるような視線で見つめ続ける。
しばらく目を閉じて何かと葛藤していたような孝二だったけれど、やがて観念したようにため息をついた孝二が、あたしの手をつかんで開かせ、ポケットを探って取り出したものをそこにポトリと落とした。
「孝二……いい、の?」
小さな硬い感触ですぐにわかった。
渡されたのは、まさしくあたしが取り返しに来たものだって。