バスボムに、愛を込めて
「……要らないなら返せよ。中見たけどすげぇ女子受けしそうなバスボムだったから、次の企画会議で出しちゃうぞ俺が」
「そ……っ! それはダメ!」
「……わかってるよ。冗談。それ持ってとっとと帰れ」
やっぱり……やっぱり、孝二は話せばわかってくれる奴だよね。
あたしの目に狂いはなかった。
「うん……ありがとう」
あたしがお礼を言うと、孝二は動揺した様子でパッと後ろを向いてしまった。
「お前な……この状況で俺に礼を言うってどんだけお人好しなんだよ。……でも、そういうとこが好きだったんだ、美萌の、そういう前しか向かないとこ」
「孝二……」
「もう帰れって。俺の気が変わらないうちに」
「……ごめんね」
本当はもっと色んなことが言いたかったけど、それだけ言ってあたしはエレベーターの方へ向かった。
時間はかかるかもしれないけど、きっとまたいつか、孝二と笑って話せる日が来るよね……
そう思いながら、手の中のUSBをぎゅっと握りしめたときだった。
前方左側に見えるエレベーターの扉が開いて、二人分の人影が降りてきた。
この階には誰も用事があるわけないのに、どうして……?
目を凝らして近づいていき、途中であたしの足がぴたっと止まる。薄暗くて顔はよく見えないけど、シルエットだけでわかってしまった。
だって、あの背丈、あの髪型……ううん、そんなことよりあたしの直感が、あの影が本郷さんだと言ってる――。