バスボムに、愛を込めて
急いで止めに入ろうとしたあたしだけど、後ろから腕を掴まれ、反転させられた身体が引っ張られた。
「わ」
そうしてぶつかった先は、見覚えのあるスーツの襟、シャツ、ネクタイの柄……ま、まさか。
ここって、本郷さんの腕の中……?
かああっと沸騰したように熱くなるあたしの頭に降ってきたのは、予想外の優しい声。
「アイツに何された……?」
「ふぇ? え、えーっと」
突然の抱擁に頭も舌もうまく回らなくなってしまったあたし。
でも、背後で寧々さんの怒鳴り声と、孝二の焦ったような声が聞こえて、我に返る。
「あ、あの、何もされてません! だから、早く寧々さん止めないと!」
そう言って本郷さんの腕から抜け出そうとしたけど、がっちり背中に回された腕がそれを許してくれなかった。
「……もうちょっと、葛西の好きにさせておこう。なにもされてないと言ったって、アイツがお前を怖がらせたことに変わりはないだろ」
「それは……そう、ですけど」
それにしても、「オラァ!」とかいう寧々さんのドスの効いた声がちょくちょく聞こえるから、なんだかハラハラしてしまう。