バスボムに、愛を込めて
「でもとにかく……間に合ってよかった」
ふっ、と背中から温もりが離れていくのがわかって、あたしが無事だという確認が済んだからもう抱き締めるのは終わりか……なんて、名残惜しく思ってうつむいていると。
頭上でカチッと音がして、目の前にある彼の胸ポケットに、畳まれた眼鏡が差し込まれた。
うそ……! 本郷さんの眼鏡なしバージョンって、あたし初めて見る!
こんな状況でもバッチリ興奮できる現金なあたしは、上から紐か何かで引っ張られたみたいに、パッと上を見た。
でも、期待していた彼の顔の全貌はわからず……
っていうか、近すぎて綺麗な瞳しか目に入らな――――
「――――っっ!?」
突然、唇に押し当てられたやわらかいものの感触。
まばたきを繰り返すあたしの目の前には、本郷さんの伏せられた長い睫毛。
あたし、もしかして、本郷さんとキス……してるの?
ようやく脳が理解したときには、すでに彼の唇は離されていた。
「展示会の日……悪かった。ひどいことを言って」