バスボムに、愛を込めて
20.梅雨明けと、オデコの熱
夢心地で会社に着いたあたしが本郷さんとともに実験室の扉を開けると、そこにいたのは泣きはらしたように赤い目をしたお嬢。
そしてその隣には、彼女の頭をよしよしと撫でる、見慣れないオジサンの姿があった。
……あれ? この人、誰だっけ? どこかで見たことがあるような――
「……社長」
隣で本郷さんがぼそりと呟くと、あたしの頭の中ではマンガのように電球がパッと点灯した。
そうだ! この人、うちの会社の社長じゃない! ……って。
「な、なんで、ここに社長が……!」
「――あ、美萌さん!」
ガタンと椅子から立ち駆け寄ってきたお嬢は、あたしの身体のいろんな部分を確認するように触れて、不安げに問う。
「どこも……なんともない、ですか?」
「あ、うん! 心配かけてごめんね……本郷さんと寧々さんが、助けてくれたから」
あたしはそう言うと、お嬢の手を取ってその中にそっと大事なUSBを握らせた。
「もちろん中身も無事。……もう、どこにも落としちゃだめだよ?」
「ありがとうございます……! これからは極力社外に持ち出さないようにします」