バスボムに、愛を込めて
反省したように言うお嬢に、あたしと本郷さんは顔を見合わせてお互いに安堵の笑みを浮かべた。
やれやれ。これで、一件落着――
「よかったなぁ飛鳥。私の言った通りだっただろう。仲間がなんとかしてくれるって」
「パパ……」
――じゃなかった! 忘れてた! 社長の存在!
恰幅の良いその姿がゆっくりとこちらに近付いてくると、自然と背筋がぴんと伸びる。
彼はお嬢の隣に並び、優しげに目を細めて私と本郷さんを見ると小さく頭を下げた。
「娘がご迷惑をおかけしたみたいで申し訳ない。でも、どうやら新製品の情報は漏れずに済んだようだね」
「あ、あの……はい! じゃなくて、いえ、迷惑だなんてとんでもない。今回のことは私の行動が招いてしまったことでもありましたし……」
孝二をあそこまで追い詰めてしまったのはあたしのせいだもの、お嬢ばかりを責めるのは違うよね。
「羽石さん……だったかな?」
そんなあたしに、社長は穏やかな調子を崩さずに言う。
社長に名前を呼ばれるなんて、めちゃくちゃ緊張するんですけど……
「ちょっと、こっちに」
「? ……はい」
……どうやら内緒話があるらしい。
控え目に手招きされて、あたしは邪魔な髪の毛を耳に掛けて社長の方へずいっと顔を寄せた。