バスボムに、愛を込めて


「羽石さんって……見かけによらず真面目なのね」


あたしの手元を覗き込んだ寧々さんが感心したように言う。


「あはは、よく言われます。初対面の人には絶対血液型Bでしょって言われますけど、実際はAだし」

「あら、私と真逆ね。私はAの振りしたBだから」

「ほんとですか!? 見えない~」


あたしたちは料理が運ばれてくるまでずっとこんな他愛のない話で盛り上がり、その時間だけであたしはすっかり寧々さんを好きになっていた。

美人でお上品で仕事ができる先輩……なんてイメージを勝手に持っていたけど、実際そんなことはなくて。

髪が長いのは切るのが面倒だからで、黒髪の理由も染めるのが……以下同文。

仕事でもいっぱいミスしたことあるわよって教えてくれた寧々さんは、すごく親しみやすい人だった。

おまけに注文したものを豪快な食べっぷりでどんどん胃に流し込み、三回もご飯をおかわりする姿は見ていて気持ちがいいくらいだ。


「――じゃあ、アンケート見せてもらおうかな」


食事を終え、テーブルの上がきれいになったところで、寧々さんはあたしの作ったアンケートを見てくれた。

何かダメ出しされちゃうかなぁ……と、少し緊張して何か言われるのを待っているときだった。


「……やっぱり、ここだったか」


背後から聞こえた声に反応して、あたしの耳はあのインチキっぽい手品師のごとくでっかくなった。

これは間違いなく、愛しの本郷ボイス!


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