バスボムに、愛を込めて
「俺たち兄弟は、二人とも男のくせに昔から綺麗な物が好きだったんだ……」
ガラスのビー玉とか、おはじきとか。海で一緒に遊んでいた時も、水遊びより綺麗な貝や石を拾うのに夢中になったり。
そういう遊びを理解してくれるのがリョータさんだけだったから、二人で遊ぶのが一番楽しかったのだと、本郷さんは話した。
要するにブラコンだったんだ、俺は。そう自嘲しながら、彼は話を続ける。
成長するにつれて、彼らは同じ夢を抱くようになった。それは、“人を綺麗にするメイク関係の仕事に就くこと”
……だけど、周りの男友達に同じような方向性の人はいなくて、自分はやっぱり人と少しずれた感覚なのかもしれない、と本郷さんが思い悩んだのは高校生の頃。
「当時付き合ってた彼女だけはそれを応援してくれてて、俺の心の支えだった。まだガキだったけど、彼女のことはちゃんと好きだったから、キスもそれ以上のこともした。でも……その幸せは、長くは続かなかった」
ある日、本郷さんが学校から家に帰ってみると、見たことのない男物の靴があって。
リョータさんの友達でも来てるのだろうと特に気に留めなかった彼だったけれど、リビングに一歩入ってみて、言葉を失った。
『……やめて、弟が帰って来ちゃう』
ソファの上で抱き合い、キスを繰り返しているのは紛れもなく自分の兄。
でも、その相手は女の人じゃなかった。リョータさんと同じ高校の制服を着た……男の人だった。