バスボムに、愛を込めて


「……それ、きっと私のせいよね? ごめんなさい。母から聞いて少し知ってるの。あの子の潔癖のこと」


まるでピアノでも弾くように、乳液をつけた後のあたしの肌を指でマッサージしながらリョータさんが言う。


「でも、今日この家へ来たってことは、瑛太の中で何かが変わっている証拠。美萌ちゃんは美萌ちゃんらしくいればいいのよ。ただ、ちょっと気になるのが――――」


今度は鏡越しでなく、身を屈めて直接あたしの顔を覗き込んだリョータさん。


「美萌ちゃんは、ナチュラルメイクが好きなのね?」

「あ……そうですね。どちらかというと」


ベースメイク部門にいたくらいだから、どれだけ素肌っぽく見せるのかにいつも命をかけているあたしのメイク。

もともと派手な顔立ちではないし、リップやアイシャドウはいつも無難な色で、それが似合ってると自分では思っているのだけど。


「可愛い顔の美萌ちゃんにはそれでもよく似合うんだけど。もう大人なんだし、ちょっと背伸びしたメイクにもチャレンジしてみない? ……瑛太もクラッときちゃうような」


リョータさんの言葉に、あたしは目を瞬かせる。

……本郷さんがクラッと。それは、あたしにとってものすごく大きな誘惑だ。それに、リョータさんにメイクしてもらって可愛くならなかった女性を今まで見たことがない。

彼にお任せすれば、もしかして寧々さん級の美女に変身できたりして……?


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