バスボムに、愛を込めて


「これが、あたし……」


思わずそう呟いたのと同時に、部屋の扉がノックされた。


「……きっと瑛太ね。ふふ、どんな顔するかしら?」


ルンルンと鼻歌でも歌いそうな足取りで扉の方へ向かっていったリョータさん。

あたしはドキドキしながら、どんな表情をしようかと考えていた。

いつもの笑い方じゃダメだよね。いうなれば悪女っぽく?
……あ、そうだ。寧々さんみたいに品よく微笑めばいいのかな。

ガチャ、と扉が開き、あたしは後ろを振り向いた。入ってきたのはやっぱり本郷さんで、その後ろでリョータさんがにやりとしたり顔をしている。

真顔で穴の開きそうなほどじっとあたしを見つめた本郷さんは、しばらくすると怪訝な表情になりこう呟いた。


「……兄貴。本物の羽石をどこに隠した」


ほ、本物……? って、あたしは一人しかいませんけど!

もしかして、リョータさんマジックがそんなに効いてるの……?


「あらやだ、目の前にいるじゃない」


口元に手を当てながら、クスクスとリョータさんが笑う。


「……いや、アイツはこんなに色気のある女じゃ――」

「そ、それはひどいです! 本郷さん!」


――あ。せっかく綺麗にしてもらったのに、こんな風に怒っちゃったらいつものあたし戻っちゃう……

もっと反論したいのを我慢して、口をつぐんだあたし。

それでも今の発言は傷ついたから、目だけで彼を睨むと、本郷さんは何故かぱっと顔をあたしから背けた。
その耳は、ほんのり赤く染まっている。

これはもしや……照れてる? やっぱりリョータさんマジックってすごいかも!


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