バスボムに、愛を込めて
ズキン、と胸に鈍い痛みが走った。
それを言われたリョータさんも、自分の彼女だった人がそんな行動に出たって聞かされた本郷さんも、どっちもつらいに決まってるよ、そんなの……
「…………ひどい」
誰にだって、秘密にしておきたいことの一つや二つあるはず。
それを、弟の彼女とはいえ第三者が、そんなねじ曲げた表現で周りに言いふらすだなんて……
「いいのよ。私もね、周りにいつカミングアウトしようか悩んでいたし、嫌がらせと言ったって、私は身長もある方だから、暴力的なことをされたことはないの。物を隠されたり壊されたり、陰口を叩かれたり無視されたり、その程度のこと」
「当時の彼氏には面倒くさがられて逃げられちゃったけどね」と、冗談めかして付け加えたリョータさん。
……なんて優しい人なんだろう。優しいのに、芯の部分はとても強くて。
リョータさんは、女性らしさと男性らしさの両方を持った、素敵な人だとあたしは思う。
「……でも、なんでそれを俺に言わなかったんだ? 責めてもよかったのに……」
「あら、私のこと避けてたのはどこの誰よ? まあ、そうでなくても話す気はなかったけどね。瑛太が本気で好きだった彼女を悪く言うのはいやだったし、それで彼女を恨むようになってもアンタを余計に苦しめるだけだし」
「兄貴……」