バスボムに、愛を込めて
今ので、寿命が……百年くらい縮んだ。って。あたしは何歳まで生きるつもりなのよ。
もう比喩もツッコミも何もかもがおかしい。身体中が熱くなりすぎて、沸点を飛び越えた脳は壊れちゃったみたい。
こんなんで、いつか迎える彼との初夜は大丈夫なんだろうか……という一抹の不安を胸に抱きつつ、その日は結局健全な(?)戯れだけで終わった。
だけど夕飯の時にあたしの顔を見たリョータさんと本郷母は、
“コイツら絶対にしたな”
という意味深な笑みを浮かべてて、あたしはその時初めて自分のメイクの、特に口元がひどいことになっているのに気が付いて、恥ずかしい思いをしたのだった。
仕事が忙しいらしい本郷父には会えなかったけど、楽しい時間はあっという間に過ぎて、あたしたちはあまり夜遅くならないうちに本郷家をおいとました。
蒸し暑い夏の夜の空気の中でも、あたしたちは手を繋いで歩き、やっと本物の恋人同士になれたんだという喜びに浸る。
でも、倍増するのは喜びだけでなく、別れの時の名残惜しさも同じ。
送ってもらったあたしの家の玄関先で、「おやすみ」だけ言って帰ろうとする本郷さんの服の裾を掴むと、振り向いた彼もまた、切なそうな顔であたしを見つめた。
そしていつの間にか冷たい玄関の扉に背中が押し付けられているのに気が付いた時には、眼鏡を取ることも忘れた本郷さんと、あたしはまた何度も何度も熱い口づけを交わしていたのだった。