バスボムに、愛を込めて
23.屋台、克服-side 本郷瑛太-


七月最後の金曜は、週末だというのに実験室の空気が重く、皆疲れたように椅子に座っていた。

パワーポイントでの資料作りにかなりの時間を費やした俺も例外ではない。

外した眼鏡を実験台の上に放り、両手で顔を覆ってさっきまで行われていた会議の記憶を反芻する。


『他のメーカーにないアイディアはどの辺りですか?』

『固形物として浮くのが花びらだけというのは芸がない』

『悪くはないが目新しさに欠けますね』


一回目のプレゼンでいきなり上手くいくわけがないというのは経験上わかっていたことではあるが、そこまで評価が低いのは正直言ってショックだった。

特に美萌は、指摘を受けた花びらの“種類”にかなり凝っていたから、それが伝わらなかったのが相当悔しかったらしく、皆が実験室に戻る中駆け足でどこかへ行ってしまった。

中庭辺りで泣いているのだろうか。それにしても、もう二十分は戻ってきてない。

……ちょっと遅すぎるな。

俺は実験室を出て中庭に行ってみたが、そこには誰の姿もなかった。


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