バスボムに、愛を込めて
美萌は一体どこへ……?
「――本郷さん!」
そのとき、いつものように必要以上の大声で俺を呼ぶ声がした。
振り返ると、美萌が買い物袋を手にこちらに走ってくる。……その目に涙の跡はない。
「……なんだ、外に出てたのか」
「はい、もう、あんなにダメ出しされたらじっとしていられなくて。こういうの、ヒントにならないかなぁと思って買ってきたんです」
ガサガサと袋を探って美萌が取り出したのは、他社製品のバスボム。
でも、俺たちが作ろうとしてる若い女性向けでなく、子供向けのキャラクター商品だった。
廊下の真ん中で、美萌はそのパッケージを俺に見せながら熱く語り出す。
「あたしたち、“オシャレ感”にちょっとこだわりすぎて遊び心が足りなかった気がするんですよね」
「……遊び心?」
聞き返した俺に、美萌は丁寧に説明を加える。
「これは、中にキャラクターの人形が入ってるんですけど、全部溶けるまで全六種類のうちどのキャラクターが入ってるかわからないんです。こういうの、子供ももちろん喜びますけど、中身をちょっと変えれば女子も喜ぶものになりそうな気がしませんか?」
泣いてるかも、なんて思った俺は、まだ美萌をちゃんと理解してなかったんだなと、その生き生きした表情を見ていて思った。
転んでもタダじゃ起き上がらない彼女の根性は、俺に尊敬の念すら抱かせる。