バスボムに、愛を込めて
「どうしてですか? ここから近いから、あたしは今日の会社帰りでもいいかなって思ってたんですけど……」
「……その格好じゃつまらない」
「え? 今日のあたしの服、変ですか?」
……馬鹿。そういう意味じゃない。
俺は周りに人目がないことを確認してから、美萌の耳元でそっと囁く。
「……俺だって萌えたい日くらいある。浴衣、着て来いよ。髪も上げてな」
「もっ……もも萌えっ!?」
「お前風に言ってみた。ついでになんで日曜じゃないかって言うと……」
真っ赤になって慌てる美萌が可愛くて、俺はさらに追い打ちをかける発言を、彼女の小さな耳に吹き込んだ。
「浴衣萌えしたあとで、中身を頂くからだ。じっくり一晩かけて、な」
言い終えて美萌の表情を窺うと、相変わらずりんごのように頬を赤くした彼女は上目遣いに俺を見て言う。
「……本郷さん」
「ん?」
「あたし、鼻血出てません……?」
「漫画の読みすぎだ」
あり得ないことを言い出す美萌の頭を軽く小突くと、俺たちはようやく実験室に向かって歩き出した。