バスボムに、愛を込めて


「ねえ、もうバレてるわよ? 男なら堂々としなさい」


葛西にバシっと肩を叩かれたそいつは、渋々……といった感じに顔を上げる。


「やっぱり……孝二! 久しぶり! なんで寧々さんと一緒にいるの?」


無邪気に聞きながら、二人に近付く美萌。


「ああ……ええと、その」


中丸の方はと言うと、困ったような顔をして口ごもっている。

あの事件から時間が経ったとはいえ、中丸に対して普通の態度を取る美萌には、葛西じゃないがちょっと説教したくなるところではあるが、それが美萌の長所でもあるから大目に見てやるとして。

……葛西とこいつが何故一緒にいるのか。

男女でこういう場所に来る理由なんて、ひとつしか思い当たらない。


「いつからそういうことになってたんだ? あの時の葛西は本気で怒ってたように見えたが……」

「ええ、そりゃもちろん怒ってたわ。だから、お説教はあの日だけで済まなかったの。美萌ちゃんに危険が及ばないように見張る意味も含めてね。……そしたら、意外と話が合っちゃって。ね?」


二人で目を合わせた葛西と中丸は、照れくさそうに笑い合っていた。

意外な組み合わせ……でもないのかもな。喧嘩になったら激しそうな気もするが、結局葛西が勝つんだろうし。


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