バスボムに、愛を込めて
「よかった……孝二には幸せになって欲しかったんだよ、あたし」
お人好しの美萌は、しみじみそう言って中丸を見つめた。
「美萌……あのときは本当に悪かった。お前も、幸せにしてもらえよ? あと、立派な大人のオンナにもな」
「なっ……孝二セクハラ!」
また例の幼なじみのじゃれあいが始まりそうになり、さすがにイラッと来た俺は、美萌の手を引っ張り自分の身体の後ろに隠した。
「…………余計なお世話だ」
中丸をひと睨みしてから葛西たちと別れると、俺は美萌の手を引っ張り石段をさらに上る。
「本郷さん……?」
上がりきったところには幸い誰もいなくて、俺は美萌の手を解放してやり彼女と向き合う。
ぽつぽつと、等間隔に吊るしてある提灯の、頼りない明かりの中に浮かび上がる美萌はとても綺麗だった。
「……お前さ」
「はい」
「いつまで“本郷さん”なんだ?」
さっきまではそこまで気に留めていなかったものの、やはりどうしてもあの幼なじみに嫉妬してしまうのだ。
なんでアイツが“孝二”で俺が“本郷さん”なんだ?――と。