バスボムに、愛を込めて
「あはは、勘がいいのね羽石さんて」
え……?
否定されるつもりで聞いたのに、予想外の反応を示されてあたしは固まる。
「……余計なこと言うなよ」
少し迷惑そうに言う本郷さん。でも、余計なこと……って。やっぱり否定してはくれないんだ。
「余計なことってなによ。事実を事実として言おうとしているだけじゃない」
「今ここで言う必要がないって言ってるんだ」
なんだか喧嘩が始まってしまった。どうしよう……
「なんで? 羽石さんが誤解したままじゃ可哀想じゃない」
「寧々」
――え? ねね……って。言ったよね、本郷さん、今。
さっきまで賑やかだったはずの店内の音が遠ざかって、あたしの頭の中には本郷さんの口にした“寧々”というフレーズだけがリピート再生される。
お二人はもしかして、そういう関係なんですか……?
無表情で二人を交互に見つめると、本郷さんはばつが悪そうに咳払いをし、寧々さんは苦笑しながらあたしを見た。
「……付き合ってたの。ほんの三ヶ月だけどね」