バスボムに、愛を込めて
24.世界のどこより熱い夜
駅のコインロッカーに入れていたお泊り用の荷物を持って、お祭りの帰りにやってきたのは瑛太さんの住むアパート。
その外観はさすが瑛太さん、と感心したくなる(彼が設計したわけじゃないけど)お洒落なつくりで、ダークブラウンの壁に並ぶ扉は一軒ごとにトリコロールカラーのどれかが当てられていた。ちなみに三階の瑛太さんの部屋の扉は青。
「おじゃまします」
初めて足を踏み入れる、憧れの場所。しかも立場は“彼女”として。
興奮とドキドキで思わず無遠慮に部屋の中を見渡してしまうあたしを、瑛太さんは十畳以上はありそうなリビングダイニングへと誘導した。
「何か飲むか?」
モノトーンで統一された家具の、座り心地最高のソファに座らせてもらったあたしは、キッチンで冷蔵庫を覗く瑛太さんの背中に答える。
「お水、いただけますか?」
今日はよく歩いたし、お祭りの後半、二人で少しお酒も飲んでいたから、喉が渇いていた。
瑛太さんは一本のミネラルウォーターのボトルを手に、こちらに近づいてくる。
それをあたしにくれるんだろう、と思ったら、隣に腰かけた瑛太さんが自分でそれを飲み始めてしまった。