バスボムに、愛を込めて
3.お嬢のプライド
ぼんやりと青い春の空の下、ぼんやりと生暖かい風があたしの内巻きボブヘアを揺らす。
でも……一番ぼんやりしているのは、まんぷく亭を出てからのあたしだ。能天気が取り柄だったはずなのに、なんだろうこの胸の痛みは。
公園を通りかかると、噴水に反射した太陽の光が目にしみた。
あのあと、寧々さんは気を利かせたのか気まずくてその場に居たくなかったのか、『先に戻ってるね』と言い、あたしと本郷さんを二人きりにした。
別れた理由とか、色々彼に聞きたいことはあったけど、テンパり気味のあたしは何故か一番にこんな質問をした。
『本郷さんって、寧々さんみたいな女の人が好みなんですか?』
そうだとしたら、髪を伸ばして、ベージュブラウンの色も黒に染めて……の前に、女子力も磨かなきゃなぁなんて、その時はばかみたいに呑気なことを思っていたのだけど。
『別にそういうわけじゃないけど……まあキムチよりは、断然葛西だな』
ずどん、とあたしのテンションがビルの五十階くらいの高さから地に落ちたのは、その時だ。
ほどなくしてカツ丼が運ばれてきたけど、地面にめり込んでなかなか抜け出せない気持ちのせいで、湯気で眼鏡が曇って外して~の一連のレア映像も見逃してしまった。