バスボムに、愛を込めて
「……うるさいオバサン」
憎々しげに呟いたお嬢。
「オ……オバッ!」
寧々さんの整った顔が、みるみるうちに怒りで歪んでいく。
やばい、これは一触即発な雰囲気……!
こういう時は男性陣に止めてもらった方が……!と、キツネさんと眼鏡王子を交互に見たあたし。
しかし。キツネは細い目をさらに細めてすがるような視線を送ってくるし、王子は面倒くさそうに口パクで“お前が止めろ”と言っている。
ズルいです! 王子の頼みじゃ断れません!
「あ、あの二人とも落ち着いてください……」
あたしは二人のぶつかり合う視線の火花で焼け焦げないか心配になりながら、仲裁に入る。
「私は落ち着いてまーす。あのお局様が勝手に怒ってるだけでーす」
お、お局……! このバカお嬢、なんでそう火に油を注ぐようなことを……
「――あぁん?」
ガツン、という激しい音とともに、寧々さんの恐ろしい声が聞こえて、あたしはおそるおそる視線をそちらに向ける。
すると黒いパンプスの片足で実験台の角を踏みつけ、身を乗り出してお嬢を睨む寧々さんの姿が。
ひいぃ、いつもの寧々さんじゃない〜!