バスボムに、愛を込めて
さて、どこへ行こう……まずはゆっくり話してみないとなぁ。
あたしは階段を降り、そんなに広くはないけれど太陽の陽射しはたっぷり注ぎ込む中庭の方向へと向かった。
あそこならベンチと自動販売機がある。この問題児が少しでも心を開いてくれればいいんだけど……
そう思いながら廊下の途中で振り返りお嬢を見つめると、彼女はふいっとあたしから目をそらした。
はぁぁ……手強そうだぞ、これは。
適当な手入れしかされてない中庭の芝生には、たくさんのタンポポが咲いていた。
それを踏まないように自販機の方まで歩くと、隣にあるベンチに座ったお嬢に聞く。
「何飲む? 冷たいのかあったかいのか……」
「お昼にコーヒーいっぱい飲んだんで、私はいいです」
「……あ、そう」
こういうときは喉が乾いてなくても先輩に甘えるものじゃないかなぁ、と口には出さずに呟いて、あたしは自分用の冷たいミルクティーのボタンを押す。
仏頂面のお嬢の隣に腰かけて、ひと口ミルクティーを喉に流し込んだところで、あたしは口を開いた。