バスボムに、愛を込めて
「小森さん……もしあの職場に不満があるのなら正直に教えて欲しいな。まぁ、“寧々さんを辞めさせろ”とか言われたら困っちゃうけどね」
あはは、と大して面白くもない自分の冗談に自分で笑った。
むなしいけど、できるだけ説教臭くならないようにしたいから仕方がない。
「この会社に入ったってことは、化粧品が好きなんだよね? もしも小森さんのやってみたいことがあるなら、あたしたち協力するし……上が決めたこととはいえ何かの縁があって同じチームになったわけだから、仲良くやらない?」
お嬢は、相変わらずだんまりだ。上空でピチチ、と鳴く小鳥の声が沈黙を際立たせ、心が折れそうになってくる。
もうさっさと白旗を上げて、泣きながら本郷さんの元に戻ってしまいたい……
ま、帰ったところで慰めてもらえる確率も低いけどさ。
あたしがそんな悲観的な気分でいると、隣から小さな小さな声が聞こえた。
「…………本当は」
――あ。お嬢が、喋った。
彼女の本音を聞き逃してなるものか!と、あたしは本日二度目となるマギー美萌への変身を遂げる。