バスボムに、愛を込めて
「集められたメンバーも、羽石さんを含めすごい人たちばっかりだってパパに聞きました。だから、私の力なんてあってもなくても同じなんじゃないかって、そう思ったら、今日素直に皆さんのところに行くことができなくて。葛西さんにもあんなひどい事を……」
え。あたし全然すごい人じゃないのに、社長に存在を知られていたんだ。……びっくり。
と、それはともかく、よかった……この子、ちゃんとやっていいことと悪いことの区別がつくじゃない。
寧々さんにひどいこと言ったって、自覚もある。
あたしはミルクティーの缶をそっと椅子に置き、白衣のポケットからハンカチを出して彼女に差し出した。
「……っく。あり、がと……ございます……」
そこに顔を押し付け、涙を拭った彼女がぽつりと言った、
「……なんか。……キムチくさい……?」
――――え。
おそるおそるポケットを探ってみると、さっきまで着けていたけどミルクティーを飲むために外したマスクが出てきた。
えーっと。もしかしてマスクに乗り移るほどの激烈なキムチ臭をあたしはこの口から……
ぞぞぞ、と背筋に寒気が走った。