バスボムに、愛を込めて
「ご、ごめんなさい! 聞いてませんでした!」
「今すぐその顎を拭け。 何を考えていたのかは恐ろしいから聞かないが、とにかく懇親会の店のこと頼んだぞ」
「り、了解です!」
何故か濡れていた顎をささっと拭い(まさかヨダレじゃないよね?)、本郷さんに敬礼すると、前の扉から川端さんと寧々さん、後ろの扉からはさっきまで着てなかった白衣に身を包んだお嬢が戻ってきた。
寧々さんの表情はまだちょっと硬くて、簡単に怒りは解けていないみたいだ。
気まずい空気が一瞬流れ、けれどその空気を断ち切るようにお嬢が寧々さんのもとへ駆けて行くと、彼女はすぐに深々と頭を下げた。
「葛西さん! さっきは失礼なことばかりして、すみませんでした! これからは心を入れ替えて一生懸命みなさんの役に立ちたいと思いますので、どうか許していただけませんか……?」
寧々さんはいきなり態度の変わったお嬢に一瞬面喰らった表情をして、でもそれからすぐに何かに気付いて目を細めた。
「あなた、その爪……」