バスボムに、愛を込めて
その日はお湯を張った大き目の水槽に他社製品をひとつずつ溶かしてみて、色や香りや溶け方、一定時間肌を漬けてみたあとのすべすべ感などの研究に半日を費やした。
やりきれなかった分は“宿題”として、今夜自分の家のお風呂で試してみるようにと川端さんに言われた。
ちなみにあたしに割り当てられたのは、ハチミツの成分がお肌に潤いを与えるという黄色くて丸い可愛らしいバスボム。
仕事だからちゃんとレポートを書かなきゃならないとはいえ、今夜のバスタイムが楽しみだ。
五時過ぎに女三人で一緒に会社を出て、地下鉄組だという寧々さんとお嬢とは途中で別れ、ひとりで帰路に着いたあたし。
本郷さんはいつ帰ったのか知らないけど、いちおう駅と電車内でキョロキョロその姿を探し、いないことがわかるとため息をついてシートに腰を沈めた。
今日は、萌え疲れたなぁ……毎日顔を合わせていれば、徐々に慣れてくるものなのかな。
寧々さんと元恋人同士だということを知った時は驚いたしショックだったけど、二人とも特に意識しているわけじゃなさそうだし、もう過去だから関係ないよね?
とりあえずあたしはあたしなりに、本郷さんとの距離を縮めるのよ!
うん、と自分に言い聞かせるように頷き、家の最寄駅で降りるとアパートまで十五分強、川沿いの道を歩く。