バスボムに、愛を込めて
5.不本意なファーストキス
「で、今日はまたなんでここに?」
あたしはバッグから家の鍵を出し、それを鍵穴に差し込みながら孝二に尋ねる。
孝二は大学を卒業してから、地元で就職したはず。隣県とはいえその海沿いの市からここへは、車で三時間以上はかかるのに、どうしてわざわざ……
「俺、実はこっちの企業に転職して、今日がその初出勤だった。住んでるのも、この近くなんだ」
「……え?」
驚きでドアノブを握っていた手の力が抜け、再び閉まってしまった扉。
だって、孝二は向こうに大切な人が……
目を見開くあたしに、孝二は苦笑しながら言った。
「……まぁ、お察しの通り駄目になっちゃったんだ。だから美萌、今夜付き合え」
ガサッと音がして、目の前に掲げられたのはお酒とおつまみの詰まったコンビニ袋。
やけ酒に付き合うのは構わないけど、あたしは孝二の言ったことが信じられずに、ショックを受けていた。
だって、あんなに仲のよかった孝二とキリちゃんが別れちゃったなんて……