バスボムに、愛を込めて
「きみは人の顔色から何か察するということはできないのか?」
「顔色? そういえば本郷さん、あまり血色がよくありませんね! もしかしてどこか具合でも……」
「……これは生まれつきだ」
し、失礼しました!と頭を下げて、さっきより若干早足になった本郷さんに小走りでついていく。
背、高いなぁ……美萌サーチ(ただの目測)によると、186センチってところ。
あたしが150とちょっとしかないから、キスをするにはちょっと苦労しそう……って、やだやだ、まだ早いってばぁ!
バシ、と本郷さんの背中を叩いたつもりでにやけていると、迷惑そうに振り返ったのは知らないOLさんで。
「ご、ごめんなさいっ!」
その場で平謝りして本郷さんの姿を探したけど、もうあの大きな背中は見当たらなかった。
先に行っちゃったんだ……
でも、今日から本郷さんと同じ部屋にいられる! 彼と同じ空気を吸える! これを機に、カレカノになることだって、きっと夢じゃない! 頑張れ、あたし!
天高く拳を突き上げると、周囲からは冷ややかな視線。
あたしは愛想笑いを残し、そそくさと会社に向かうのだった。