バスボムに、愛を込めて
1DKの狭い部屋に、体の大きな孝二と入るのはすごく窮屈だった。
孝二はモテるけど、あたし好みのシュッとしたイケメンではなく、色が黒くてマッチョで、完全な体育会系。
「おー、美萌のくせに女子っぽい部屋」
そして幼なじみであるから、失礼な発言もバンバン飛び出す。
それでも不思議と腹は立たない、兄妹みたいな関係のあたしたち。
「どこからどう見たってあたしはれっきとした女子でしょうが! ねぇ孝二、シャワーは?」
「借りられるなら是非」
「じゃあお先にどうぞ」
そう言って棚から取り出したバスタオルとフェイスタオルを孝二に手渡す。
あたしは後でゆっくり入って、バスボムの研究をしなきゃだもん。
「……一緒に入るか?」
ぼそっと、孝二が呟く。
「何言ってんの。あ、着替えはたぶんどっかにお兄ちゃんのがあるから、探して後で置いておくね」
「おー、さんきゅ」
バスルームに向かう背中を見送ると、あたしは胸に手を当ててふう、と息をついた。
……びっくりした。孝二があんな冗談を言うなんて、初めてだったから。
きっと、キリちゃんとのことで相当傷ついてるんだ。今夜は愚痴でもなんでも聞いてあげよう。
あたしはそう思って、二人分のビアグラスを冷蔵庫に入れてから、孝二の着替えを探すためにクローゼットを物色し始めた。