バスボムに、愛を込めて
「結婚はもちろん考えてたし、桐子にも話してた。……でも、桐子にはそれが俺と桐子のためじゃなく、俺が俺のためだけにする結婚なんじゃないかって言われて、否定できなかった」
……孝二の言っている意味がよくわからない。
あたしはお互いのグラスにビールを追加して、ひとくち飲んでから言う。
「もっと簡単に言ってよ、今の話あたしには難しい」
「だよなぁ。美萌がそんなんだから、ここまでこじれたわけだし」
「……なんでそこであたしが出てくるの?」
孝二は自嘲気味に笑い、一気にビールを飲み干すと、酔いが回り始めたのか少しトロンとした目であたしを見た。
「俺の心の中にはずーっと桐子以外の女がいて、そいつが地元出ていったら余計にそいつの存在が大きくなってきて……いつの間にか桐子とちゃんと向き合えないようになってた。そんな中途半端な俺に桐子がとうとう愛想尽かしたってわけだ。……今のでわかるか?」
「つまり、孝二にはキリちゃん以外に好きな人がいる。ってこと?」
「そーそー。……って、それだけかよ」
ガクッとテーブルに突っ伏した孝二。
……だって、それ以外に何があるって言うのよ。
っていうかずっと他の人を想いながらキリちゃんと付き合ってたなんて、最低じゃない。