バスボムに、愛を込めて


あたしは割り箸についたマヨを意地汚くちゅぅっと吸うと、その反対側で孝二の頭をツンツン刺す。


「……で、その地元出てった子って誰なの?」

「……秘密」

「えー! なんでよ! あたしの知ってる子?」


わり箸攻撃の力をツンツンからブスブスに変えて孝二の黒髪短髪アタマを攻めていると、急に起き上がった彼にその箸を奪われてギロリと睨まれた。

……な、なによ。


「美萌は……いるのか? 今付き合ってる奴」


そう言ってそのままあたしの箸を使って、イカを食べ始めた孝二。

本郷さんに同じことをされたら、“かかか間接キス!”と鼻息荒くなるとこだけど、孝二が相手じゃ何も感じない。
犬にキスするのと同じようなもんだ。

あたしは枝豆に手を伸ばし、つまらなそうに言う。


「彼氏はいなーい」

「彼氏は……ってことは、好きな男はいるってことか」

「ん。……会社入ってからずっと片想い中」


そう答えるのと同時に、ぽわん、と本郷さんの顔が脳裏に浮かんだ。

あー、早く明日にならないかなぁ。本郷さんに逢いたい……


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