バスボムに、愛を込めて
「……あたし、お風呂入る」
「覗いていいー?」
「バカ、今日ちょっと変だよ孝二。ふざけすぎだし。相手があたしじゃなきゃとっくに嫌われてる」
立ち上がって、タオルと着替えとバスボムを準備するとリビングを出ようとしたあたし。
なのに……扉が開かない。
あたしの背後に立つ孝二の大きな手が、扉を押さえつけているのだ。
「……変だったのは、今までの俺の方」
高いところから、孝二のいやに静かな声が降ってきた。
酔った感じもふざけた感じもなく、だからこそわけがわからなくて、あたしはドアノブに触れたまま固まる。
「美萌」
頭のてっぺんに孝二の唇が触れ、名前を呼ばれた。
やっぱり、変。絶対、変。
孝二の声がなんだか甘ったるくて、調子が狂う。
そのまま孝二はあたしを包み込むように、後ろから抱き締めてきた。
背中があったかくて、妙にくすぐったい。