バスボムに、愛を込めて
「どうしたの……?」
いくらキリちゃんとのことが本気じゃなかったとはいえ、失恋は失恋だから傷ついてるのかな。じゃなきゃ、あたしにこんなことする理由が……
「この状況でもわかんねぇの?」
「……何が?」
「俺がずーっと好きだった、地元出てった女が誰なのか」
「そんなのわかるわけ――」
言いかけた瞬間、顎を捕まれて無理矢理後ろを向かされた。
そこにあったのは、こんなに長い付き合いなのに、見たことのなかった孝二の切なげな表情。
「お前だよ、美萌」
そしてやっと明かされた真実に、あたしはたぶん、ものすごく間抜けな顔をしたと思う。
だって信じられなかった。あたしたち、ずっと幼なじみで、お互い何でも知ってて、だから恋愛対象からは最も遠い存在だと思っていたのに。
「……お前、ファーストキスもまだだったよな」
え? やだ、待って――!
「こ、じ……いや」
言葉の抵抗も、体の抵抗も、完全に無意味で。
あたしは急に豹変した幼なじみの唇を、ぎゅっと目を閉じて受け入れるしかなかった。