バスボムに、愛を込めて
お風呂から上がってみると、テーブルの上は綺麗に片付いていた。
だけどひとつだけ、捨て忘れたゴミのようなものが目に留まる。
「レシート?」
それは今日孝二がコンビニでもらったのであろう、お酒とおつまみのレシート。
白い紙が他に見当たらなかったのか、その細長い紙の裏に、孝二からのメッセージがあった。
【さっきのことは謝らない。今まで我慢してた分、押しまくるつもりだから覚悟しておけ。あと、これ俺の携帯↓】
矢印の下に、番号とアドレス。
孝二の連絡先なら前々から知ってるのに、なんで改めて……と思ったら、その下に答えが書いてあった。
【桐子のために、美萌からは連絡が取れないよう番号もアドレスも変えてあった。何かあったら連絡よこせ】
よこせって……なにその上から目線。
しかもひっぱたかれたのに反省するどころか、これから押しまくるってなんなの?
めちゃくちゃ腹が立つ……腹が立つ、のに。
「嫌いには、なれない……」
だからって好きにもなれないけど、孝二は孝二。大切な幼なじみだ。
あたしはため息をひとつついてから、バッグからスマホを取り出す。そして孝二の連絡先を打ち込んでいる途中で、画面が急に着信を知らせるものに変わった。
……知らない番号。孝二のとも違う。
今日の帰りに寧々さんとお嬢とは連絡先を交換し合ったけど、だったらちゃんと名前で出るはずだし――
「……もしもし?」
あたしは怪訝に思いながら、スマホを耳に当てた。