バスボムに、愛を込めて


あたしが勤めているのは、大手化粧品メーカーの研究開発施設。

主に行うのは新商品の開発、そして万が一自社製品でお客様に肌トラブルなんかがあった場合、その原因究明を任される部署でもある。

ロッカー室で上着を脱ぎ、白衣を羽織ればスイッチオン。

……あ、今日はマスクもするんだった。ロッカーの中にストックしてある使い捨てマスクを、ささっと装着。

よし、キムチブロック完了。

プライベートでは落ち着きのないあたしも、白衣を着ているときだけは真面目に開発のことだけを考える。

……とはいっても、今日から何をするのか具体的にまだ聞かされていない。

ざっくり言うと、バスボムを主力商品にした入浴剤の新ブランドを立ち上げたい、ということらしいけど……


あたしは筆記用具を手に、建物の二階にある“第七実験室”という場所の前で立ち止まった。

今日からここに、五人の社員で成り立つ期間限定のチームが作られる。

みんな普段は別々の実験室で、それぞれの担当する化粧品を開発している人たちみたいだけど……

本郷さんの他は、名前を聞いても顔を知らない人たちばかりだったから、少し緊張する。

そう思ってそっとドアノブに手を伸ばした時。

あたしが開ける前に、内側から誰かがドアを開けた。


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