バスボムに、愛を込めて
新月を過ぎたばかりの細い月が空からぶら下がる、暗い夜の空の下。
会社から出るときは五人揃っていたあたしたちだけど、どうしても必然的に、男二人が前を、女三人が後ろを歩く形になってしまった。
あたしも、前の二人の会話に加わりたいなぁと思いながら本郷さんの後頭部を見つめていると、まるでテレパシーが通じたみたいに彼がこちらを振り返った。
ま、まさか本郷さんも同じ気持ちでいてくれた……?
「羽石」
「は、はいっ!」
慌てて駆け寄ろうとしたけど、飲み会のために履き慣れていないよそ行きパンプスを選んでしまったせいか、何でもないところでつまづいたあたしは派手に転んでしまった。
は、恥ずかしい……。歩道のアスファルトに膝と手を突いたまま、顔を上げられずにいたあたし。
すると、目の前に男性の手がスッと差し出された。
あ、あのクールな本郷さんが、あたしに救いの手を!?
「ありがとうございま――」
ぱっと顔を上げて作った笑顔は、目の前のキツネ目を確認するなり引きつったものに変化した。
川端さーん! 紛らわしいことしないでよぉ……
「大丈夫?」
「はい、全然平気です!」
川端さんの手をやんわりと遠慮して、あたしは自力で起き上がる。
そして少し前方で、呆れ光線全開って感じの目をした本郷さんのもとへ駆け寄った。