バスボムに、愛を込めて
あたしの選んだ個室メインの居酒屋さんは、ビルの地下一階。
お洒落な間接照明に照らされた通路を進んで案内された部屋は、黒のテーブルにダークブラウンの椅子が六脚、通路よりは明るいけれど控えめな照明の明かりが落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
注文はタッチパネルでできるしお酒も料理もメニューが豊富で、本郷さんを始め皆からの評価は上々だった。
だけどそんなことより何より、あたしにとって嬉しすぎるのはこの夢のような席順!
「本郷さん、次のお酒何にします?」
タッチパネルを操作しながら聞くあたしの左隣には、ビールのグラスを空にした本郷さん。
そのまた隣にはキツネさんもいるけれど、もはやあたしにとっては背景でしかない。
「……八海山」
「あ、じゃあついでに私も同じものでお願い」
本郷さんの声に被さるように、寧々さんが言う。
「はーい、了解です」
二人とも日本酒を頼むなんて、酒豪なんだなぁと思いながら注文を済ませると、本郷さんが向かいの寧々さんを睨んでいるのが目に入った。
「お前……悪酔いするなよ?」
「別に私の勝手でしょ。もう彼氏でもなんでもないんだから、干渉しないでくれる?」
わ、どうしよう。またまんぷく亭の時みたいに険悪なムードが流れ始めてる。
二人を見比べ内心焦るあたしに対し、何も知らないお嬢はきょとんとした顔で二人に尋ねる。
「え、お二人ってもしかして……」