バスボムに、愛を込めて


「え……?」

声の主である寧々さんは、ほとんど空になったグラスをさかさまにして最後の一滴まで飲み干すと、あたしを睨む。


「誰のために悪役引き受けたと思ってるのよ。さっさと行って、あのヘタレ男押し倒しちゃいなさい。……彼のことはね、誰かが変えなきゃダメなのよ」

「寧々さん……」


頬は赤いけれど、口調はしっかりとしている。
もしかして、本当はそんなに酔ってない……?


「わかったら、今すぐ行く! あまり遠くに行かれたら追いかけられないわよ?」

「は、はい!」


慌ててバッグを掴み、椅子から立ち上がる。


「美萌さん、頑張って!」

「僕も応援してます。とりあえず月曜にチームの雰囲気が改善されてるようにお願いします」


そんなお嬢と川端さんのエールも背中に受け止めながら、あたしは個室を飛び出した。


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