バスボムに、愛を込めて
8.諦めませんから!
本郷さん、どこだろう……? 外に出たあたしは、まず辺りを見回す。
今日の彼の服装は明るめなグレーのスーツだった気がするけど、この辺は色んなオフィスの密集地帯だから、似たような格好をした人がごまんといる。
それでもあたしの目が本郷さんを見逃すってことはないはずだから、この辺にはもういないのかな……
右か左か、目の前の道をどっちに進むか迷って、とりあえずいつも彼が使っている駅の方向へと急ぐ。
ああ、やっぱりこのパンプス、痛いな……小指の端がジンジンする。
そんなことを思いながらもぐっと歯を食いしばり、本郷さんの姿を探す。
……でも、なかなか見つからない。
しばらく走っていたら息が切れて、足の痛みも尋常じゃなくなってきてしまい、あたしは膝に手をついて呼吸を整えてから、たまたま目に入った公園で休むことにした。
あーあ、もしかしたら最初に選んだ道が逆だったのかな。
それか、どこか別のお店に入ってひとりで飲み直してたりしたら、あたしのやってることは完全に無意味だ。