バスボムに、愛を込めて
「その日のヘルプに二人くらい寄越してほしいと本社の社員に頼まれたんだけど、誰かやってくれないかな」
川端さんがあたしたちの顔を見渡す。
どうしよう。去年ヘルプに行っていた先輩に、その活気のすさまじさを聞いてあたしも興味があったんだよね。
せっかくだから、お手伝いに行ってみようかな……
あたしは“行きます”という意思表示のため、控えめに手を挙げて、川端さんを見た。
すると、ほっとしたように笑った彼が言う。
「じゃあ、本郷くんと羽石さん、二人にお願いするよ」
「えっ」と歓喜の声をあげて、斜め後ろにいた本郷さんを見ると、彼もあたしと同じように手を挙げていた。
その表情には、あたしとは真逆の感情がありありと浮かんでいるけれど。
「じゃ、この資料後で二人に渡すね。直前になったら何度か打ち合わせがあると思うから、それはまた追って連絡する」
やったじゃない、美萌。仕事だから浮かれてばかりもいられないけど、久々に本郷さんと接近できるチャンス!
くるりと後ろを振り返り、満面の笑みで彼を見る。
「本郷さん、よろしくおねがいします!」
「……別にお前とよろしくする必要はないだろ。うちの社が少しでも集客できるよう手伝いに行くだけだ」
「そりゃ、そうですけど……」
……今日も清々しいほどつれないのね。
明日からゴールデンウイークに入るっていうのに、このまま本郷さんとの関係に何も変化がない状況で連休を過ごすのはなんだかなぁ。
展示会のことはもちろん嬉しいけど、まだまだ先の話だし。