バスボムに、愛を込めて
「それは……あれだ」
のろのろと後ろをついてきた孝二が、リビングに入ったところで振り返ったあたしを見て言う。
「お前に拒否権を与えたくないからな。前もって聞いたら“今日はダメ”とか言うだろ?」
「それは当たり前でしょ! あたしにだってプライベートってものが――」
「でも、今んとこ付き合ってる奴はいない」
ぐ、と言葉に詰まる。同時に以前孝二にされた無理矢理なキスを思い出し、あたしはじりじり孝二から離れ、着替えを出すためにクローゼットを開けた。
「なぁ、連休は実家帰るんだろ?」
図々しく一番テレビのよく見える場所に胡座をかいた孝二があたしに尋ねる。
実家……今年はどうしよう。三日に本郷さんと会うから、帰るとしても中途半端になっちゃう。
着替えを出してパタンとクローゼットを閉めると、あたしは孝二の方に向き直る。
「今年はやめようかな……」
「なんで」
「お正月も帰ったし、帰ったところでご飯一杯食べさせられて太るだけだし。それに……五月入ったら予定あるんだ」