バスボムに、愛を込めて

「だって。本郷さんがいいって言ってくれたから……」


ぼそぼそと答えると、孝二は眉根を寄せて苛つきを滲ませた声で言った。


「なんだそれ。いいように食われて捨てられんじゃねぇのか？」


あまりに偏った孝二の考えとその言い方に、あたしの頭の中で何かが切れる音がした。

本郷さんのこと何も知らないくせに、勝手な憶測でものを言わないでよ。

あたしだってまだ彼のことは知らない部分の方が多いけれど、それでも、そんなひどい人じゃないってことだけは断言できる。


「……孝二、離して」


怒りが爆発しそうなのをなんとか堪え、けれど震える声は隠せずに言ったあたし。

様子がおかしいと気づいたらしい孝二はあたしを解放し、うつむくあたしの顔を覗き込もうとする。


「美萌？」

「……もう、ここには来ないで」


今の距離感では、あたしたちはぶつかってばかりになってしまう。
思いやりの置き場がなくて、お互い傷つけ合うだけだよ……

突き放すような発言が効いたのか、孝二は少し声のトーンを落として言う。


「……悪い。今のは少し言い過ぎだったかもな。でも、俺はお前の為を思って……」

「それが余計なお世話だって言ってるの！」