バスボムに、愛を込めて
幸せな出来事と切ない出来事が重なって、なんだか複雑な思いで連休を迎えることになってしまったけど、あたしの心の矢印が向かう先が変わることはない。
悩むのなら本郷さんのことで悩もうと決め、三日のデートに全精力を傾けることにした。
手始めにデート服を買い、そして美容室に行き、前日には久々に同期の麻里ちゃんを夕飯に誘って、恋バナに花を咲かせた。
「――すごいじゃん、美萌! あの本郷さんとデートだなんて」
今日は本郷さんとの約束通り韓国料理を避け、けれどなにかと香辛料が好きな麻里ちゃんのためにエスニック料理屋さんに来ている。
あたしの苦手なパクチーもウサギのように次々口に入れ咀嚼していく麻里ちゃんは、あたしの前いたベースメイク部門で働く仲良しの同期。
「うん。あたしもまさかオッケーしてもらえるとは思わなかった」
「っていうか誘えた美萌もすごい」
生春巻きを箸でつかんだ麻里ちゃんが言う。
「本郷さんって、元カノ――名前忘れちゃったけど、すごく美人な先輩と付き合って、三ヶ月で振ったってのが有名だから、みんな断られるのが怖くて誘えないらしいよ?」