バスボムに、愛を込めて


「……そんなとこ座ってると、スカート汚れるぞ」


スカート……そうですよね。綺麗好きですものね、あなた。


「いいんです。あたしはもともと汚い女なんです。あたしの手で作ったお弁当もきっと菌だらけですよ、あはは」

「羽石」


もうダメだ、あたしが壊れてく。うまく笑えないし、本郷さんの顔も見れない。

ポジティブな美萌はどこに行っちゃったのよ。
今日のこと、ずっと楽しみにしてた、いつもの元気なあたしは……?


「とにかく、行くぞ」


そう言われても、立ち上がる気になれなかった。コンビニに出入りするお客さんたちが、怪訝な目であたしたちを見ながら通り過ぎていく。


「いいから立て……」


そんな言葉とともに、強く引かれた腕。
そのまま無理矢理立ち上がらされ、目に飛び込んできたのは少しばつの悪そうな本郷さんの顔だった。


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