陽染
下世界
僕の視界は、いつも真っ暗だった。
友達の顔も、自分の体も、景色だって真っ暗で、あるのは小さく壊れた豆電球が、裸でぶら下がってる。
上の世界の人が棄てたのを、誰かが吊したようだ。
“身分差別”
その言葉を知ったのは、父親からだ。
下の世界には、学校も教師もいない。
僕みたいな子供達が学べるのは、親や大人達だけだが、今ではその大人達さえも、知識が無くなっている。
無能で貧弱で、人間としての権利もない。
「上の世界に生まれたかった」
顔を上げると、暗闇の中で、ため息混じりに呟く友達を見つめる。