陽染
小さい頃から見続けた闇に目が慣れ、真っ暗な中でも鮮明に、人の姿が分かる。
「それは何度も聞いたよ、アヌラ」
冷たい床に尻を付いて、タイル状に敷き詰められて出来た溝をなぞりながら言った。
「……サルファの母親が上へ連れてかれた」
「……見たのか?」
「あぁ…、連れて行った奴らは顔を…?」
言葉での伝え方に困ったのか、顔の前で手を上下に動かして、“知ってる”での説明を探している。
「隠してた?」
「そう、でも布じゃなくて…、こう…」
また手を上下に動かす。
困惑の表情が、徐々に深まってく。