…………すき。
はっと我にかえった私は、
目の前でうたた寝している男の肩をつかみ、
グワングワンと揺さぶった。
「ちょっと!起きてよぉ!!」
名前も知らないその男は、ゆっくり顔を上げて
『………………………ねむたい。』
と、だけつぶやき、
男が座っている席の前に立っている私のお腹に寄りかかってきた!
「んぅうわぁぁぁぁあああああ?!?!?!」
驚いて叫ぶ私に男は……
『………………元気……いいこと。』
そう小さな声でささやいた。
いやいやいや!!
ワケわかんないよ!
ってか、この人無口すぎるうえに、
言うことが、ぶっ飛びすぎなのよッ!!!!!!
まじ、わけわかめ!!
わかめ!!!
ははははは………。
「ねぇ!名前おしえて!!」
なんて呼べばいいのかさえ分からなくて困ったので、名前を聞いてみた。
『しらかわ………………みやび………。』
まだ眠いのか、今にも閉じてしまいそうな目で私を見ながら、男が言った。
ふと、男が座っている席の横に置いてあるカバンを見ると、綺麗な文字で白川雅と書いてあった。
不思議な人だなぁ。
私、今まで男子とほとんど話してなかったから、こんな人がクラスにいたことも知らなかったー。
………じゃなくて!!
このお腹に寄りかかってる白川雅をどうにかせねば!!
あ、あはは……寝顔かわいいな…。
このままでいるのも悪くない気がしてきた…。
ーーーガラッ
『……?!あ、お邪魔しましたっっ!!』
同じクラスの女子が教室の扉を開けて、そう言ってすぐ扉を閉めて走って逃げてしまった。
「し、白川くん!!!今の絶対勘違いされたよっ!
起きて!起きるんだ!!起きろ!!!」
私は、まだお腹に寄りかかっている白川くんに向かって叫んだ。
『…………おなか。……………………………きもちいぃ…。』
いや!!!知らねーよ!!!!
そりゃ、お腹ぽっこりさんですからねぇ!
って、失礼な!!
「とにかく起きてよぉっ!」
『……………しずかに……しよう。』
「白川くんが起きれば静かになるのよ!」
その後15分くらい白川くんvs私の戦いが続き、やっと離してくれた……。