Re : Birthday
そこに居合わせたのは、偶然。
「……君はそこで、何してるの?」
「何もしてない」
「ふうん。…つまらなくはないの?」
「つまらなくない」
色のない瞳で無感情にこちらを見る少年に、声をかけてみたのにも特に意味はない。
ただ、気になるじゃないか。
ただでさえ何の前触れもなく雪が降ったこんな日に、ただなんとなくフラリと足を運んだ街はずれに、何の前触れもなくこんな少年がいれば。
しかもこんな、建てられて何百年経ったかも分からないような、当時の生きていた姿なんて見る影すらないような、古ぼけてボロボロの時計台の下に、ただひとりうずくまるようにしていれば。
まるで少年も同じ運命を辿っているみたいだ。
みんなに忘れ去られて1日に数分しか進まない時計と。
こんなところにいたって、誰も来ないだろうに。